こんにちは。
システム組立ちゃんねるを運営する株式会社フライクの大瀧です。
今回のブログでは、大規模システムの導入やシステム刷新を考えている企業に向けて、大事なことをお伝えします。
それは、大切な利益を投資する前に「3つの事前準備」をしっかり行ってほしいということです。
お客様の中には、およそ数千万円もの大金が動くような大規模システムを導入するプロジェクトを進行する立場にいらっしゃる方もいるでしょう。
しかし、お金だけかけて肝心の方向性や、具体的にどのくらいの時間とお金をかけるべきかなどが定まっていない中でシステム投資してしまうと、はっきり言ってその導入は無駄になってしまいます。
それはシステム専門の会社に発注をかけた場合でも同様です。
今回は、そんな数千万円の大規模システム刷新に向けた投資をする前に実施してほしいことをまとめました。
ぜひ最後までご覧いただき、システム導入前の参考にしていただけたらと思います。
フライクが考える「大規模システム」の定義は、以下の通りです。
● スケジュール感:要件定義〜システム導入〜リリースまで1年以上かかる
● 費用感:1,000万円以上の費用がかかる
この定義を前提に、大規模システムの費用対効果を見ていきたいと思います。
まずは【売上増】の軸から大規模システムを考えてみましょう。
国税庁によると、日本の法人社数328万のうち35.7%が黒字の会社です。
(2022年10月時点)
(「令和3事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」より引用)
そして、経済産業省によると、黒字企業の中で売上高営業利益率は平均3.2%となっています。
(「企業活動基本調査」より引用)
それらの情報をもとに、1,000万円の利益を生み出すために必要な売上高はどのくらいになるのかというと、
● 売上高営業利益率3%の場合→3.4億円
● 売上高営業利益率5%の場合→2億円
● 売上高営業利益率10%の場合→1億円
つまり、1,000万円の投資をするには、今よりも追加で1億〜3.4億の売上が必要となります。
また、減価償却で考えるため、5年後の未来に1億〜3.4億の売上が作れるイメージを持っていなければなりません。
次に【業務効率化】の軸から考えてみましょう。
従業員一人当たりの月平均人件費は、約40万円と言われています。
(厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」より引用)
一人あたり40万円で160時間働くと仮定した場合、1時間あたり2,500円。
1,000万円のシステムは、人件費で言うと4,000時間分の労働となるのです。
では、皆さんは4,000時間もの時間を削減するために、「業務効率化」のシステム導入をするイメージは湧いていますか?
【売上増】【業務効率化】ともに、どれだけの時間とお金が動くことになるのかを想定せず、準備ができていない状況で単にシステム投資を行ってしまうと、その資金は無駄になってしまいます。
先ほど触れた費用対効果の部分を見ていただいて何となく察しがついた方もいらっしゃるかもしれませんが、システムに対する投資対効果は非常に難しいです。
その主な理由は3つ。
それぞれについて見ていきましょう。
ITプロジェクトの投資対効果を正確に評価するためには、多くの要因を考慮する必要があります。
①システムの導入にかかる費用
・初期投資コスト
・システムランニング費用
・保守・メンテナンス費用
・運用コスト
・社内人件費
②効果検証の要素
・収益向上
・業務効率化による業務効率および労働生産性の向上
・事業継続性
・リスク低減
・市場競争力の向上
これらの要因は非常に複雑で、数値化や予測が難しいことがあります。
特に、長期的な効果や間接的な影響を図るには時間がかかり、投資対効果を確定的に計算することは困難です。
昨今は生成AIやITシステムが急速に進化しており、新しいテクノロジーやプラットフォームが登場しています。
つまり、システムは導入した時点からすでに「古いシステム」になってしまい、常に技術の進化を踏襲し続ける必要があります。
さらには、未来にどのような技術が主要となるか、どのような新たな機能や機会が生まれるか。
「おそらくこうなるだろう」という予測的な判断はできますが、確実なものを想定することはできません。
投資を行う際、今の技術やシステムが将来にわたって有用であるかどうかを判断するのは難しく、また選ぶシステムやパートナーによって技術の進化とともにシステムが成長できるかが左右されます。
ITシステムの投資対効果を適切に測定するためには、適切なスキルと専門知識を持つ人材が必要です。
しかし、多くの組織では投資評価やデータ分析に必要なスキルと知識が不足していることがあります。
ITプロジェクトの投資対効果を評価するためには、財務、プロジェクト管理、データ分析、テクノロジーなどの幅広いスキルセットが必要です。
適切な人材が不足すると、評価プロセスが正確に行われない可能性が高まります。
これら3つの複雑性が絡み合い、また昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)の流行の影響もあり、ビジネスモデルの変革を伴うデジタル×テクノロジーの利活用における費用対効果は図りづらくなってしまいます。
参考
DXに関するお役立ち資料
ここまでは、大規模システム導入における一般的な投資対効果の計測方法と投資対効果の複雑性についてお話をしました。
会社がシステムや新しい取り組みにチャレンジするときには、どうしても内外に「その投資は経営にどのようなインパクトを与えるのか?」と伝える機会があるでしょう。
トップダウンで取り組むことでも、利害関係者はもちろん、上場企業であれば株主への説明責任や、中堅企業であれば他の経営陣に報告することもあります。
そこで、私達フライクはこの難しい投資に対する効果に対して、以下のような説明をしております。
それは、「システムは導入して終わりではなく、育てていくための人件費と同じ」だということです。
その理由を「システムの育成」「人材の育成」の2つの視点からご説明いたします。
「1-2.システムに対する投資対効果を図るのが難しい理由」の「1-2-2.技術の進化と変化」でも述べたとおり、ビジネス環境における技術は日々進歩しており、目まぐるしいスピードで進化を遂げています。
また、新たなITツールやプラットフォームが次々と登場しているため、システム導入を成功させ、会社の資産やシステムそのものをビジネスパートナーとして育てるためには、変化に適応し、進化していく能力が必要不可欠です。
そこで、システムを「育てる」過程で必要なポイントをご紹介します。
・ システムは新しいテクノロジーや要件に適応できる柔軟性を持つ必要があります。これによって、将来の変更に対応でき、システムの成長スピードがアップします。
・ チームは常に最新の技術トレンドやベストプラクティスを学び、システムに適用するための努力を続ける必要があります。継続的な学習はシステムの競争力を維持するのに役立ちます。また、ツールベンダーが提供しているナレッジやコミュニティも重要な要素と言えます。
・ 技術の進歩には多くのパートナーシップも必要不可欠です。自社だけではキャッチアップできない最新のトレンドを多く取り入れるために、外部のエキスパートやテクノロジープロバイダーと連携し、最新のツールやリソースを活用しましょう。
・ 技術の進化に伴い、セキュリティとプライバシーの重要性は年々高まってきております。システムの育成において、これらの要素を考慮し、保護策を実装することが大切です。
・ システムは社内の業務効率化はもちろん、顧客との商取引にも欠かせない存在になります。
・ 利用ユーザーや利害関係者のエクスペリエンスも常に進化し続ける必要があります。常にすべての利用者のニーズや期待に合致するようにシステムを設計し、改善していくことが重要です。
技術の進化と変化を受け入れてシステムを育てていくことは、競争力を維持し、ビジネスを成功につなげる鍵となります。
人材は組織の継続的発展には極めて重要な経営資源の一つとなります。
その貴重な人材を育てるためには研修が重要となりますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前と後では、研修方法が大きく変わっています。
● オンライン研修の増加
対面・集合型の研修の開催に制約を受けたことから、オンライン研修が急速に増加しました。現在ではビデオ会議ツールや学習管理システムを活用し、リモートで受講できる形式が一般的です。
● 自己学習とオンデマンドコンテンツ
コロナ禍の研修では、個人のスケジュールに合わせた自己学習が重要視され、オンデマンドのコンテンツが増加。従業員は必要な情報を自分のペースで学び、必要に応じてアクセスできるようになりました。
● ソーシャルラーニングの重要性
オンライン研修では、ソーシャルメディアや協力ツールを活用して、従業員同士のコラボレーションと情報共有が促進されました。コロナ禍以降の現在でも、オンラインフォーラムやグループディスカッションが一般的です。
コロナ禍を経た研修方法の変化は、より柔軟で効果的な学習体験を提供するために技術と革新を活用しています。
これらの変化は、今後も継続的に進化し、効果的なリモート学習環境をさらに向上させるでしょう。
その一方で、ビジネス・業務における研修はどう変わっていったでしょうか?
組織がビジネスを加速するためには売上を上げ続けることが必要不可欠です。
そのため人材育成においても業務的な学習環境を構築し、従業員のスキル向上と対応力を促進するためにシステムは以下のような観点で役に立ちます。
・ 業務システムは従業員における業務・タスク進捗を見える化し、定量的な評価および計測をするための環境を提供します。
この評価と進捗のデータは、従業員の強化点や弱点を特定し、必要な再教育やフォロー環境を整えるために重要な情報源となります。
・ 業務を実施する場所が対面ではなく、オンラインで実施することも当たり前になった昨今、社内SNSの利活用は避けては通れません。
・リアルタイムコミュニケーションツールと業務システムの統合を通じて、従業員間および先輩社員との対話を促進。業務上で生じた小さな課題やトラブル等も即座の回答やディスカッションの機会を提供し、業務推進における質と新入社員のエンゲージメントを向上させます。
・ システムは学習データを収集・蓄積。それらのデータを分析することによって、業務システムにおける足りない要素やポイントを洗い出しできます。
・ 新入社員や配置転換によって新しくその業務に従事するメンバーがつまずくポイントをシステムに反映させることによって次の世代にはより素晴らしい業務システムが出来上がることになります。
これまでの対面型OJTとは大きく変わり、業務システムを生かしたアプローチを通じて、組織が迅速に適応し、従業員のスキル向上を支援することが期待されます。
このようなシステムを活用することにより、組織は継続的な学習とスキル向上を促進し、新しい環境においても競争力を維持できます。
ここからは、表題にもなっている「大規模システムの導入やシステム刷新」について解説します。
1. ではシステムの費用対効果を図る難しさと、フライクのシステムに対する考え方をお話ししましたが、ここではより具体的な事前準備の方法をご説明します。
重要なポイントは、以下の3つです。
なぜシステムにこの3つ要素を検討すべきなのか、というのを理解いただくには、マッキンゼーの7Sが非常に参考になります。
「マッキンゼーの7S」とは、世界的コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱するフレームワークです。
(参照:Salesforce社「マッキンゼーが提唱する組織変革のフレームワーク「7S」」)
突然ですが、大規模システム導入を考えている皆さんに質問です。
● 貴社の短期的(1〜2年)、中長期的(3〜5年)な経営戦略・事業戦略を教えてください。
● その戦略を実行するための戦術・行動指針、それらの行動進捗を把握するための方法を教えてください。
なぜシステム導入に「経営戦略と事業戦略」が関わるのか、疑問に思っている方がいらっしゃるかもしれません。
それらの関係性を理解するために、マッキンゼーの7Sモデルを活用します。
組織の構造は、組織全体の階層や役割分担を示します。事業戦略は、組織の構造に影響を与え、特定のビジネスユニットや機能の重要性を強調します。システムは、構造をサポートし、情報の効率的な流れを確保する役割を果たします。
経営戦略は、組織が達成しようとする長期的な目標や方法論を指します。経営戦略は組織の共有価値観に合致し、ビジョンやミッションと連動します。システム導入は、経営戦略に従って効果的な戦略的支援を提供するために行われます。
この要素は情報技術やプロセスなど、組織内での情報とデータの流れを指します。システムは、事業戦略と密接に結びついています。事業戦略に従って、必要なシステムを導入し、プロセスを最適化します。例えば、データ分析システムは市場分析に活用されるかもしれません。
共有価値観は、組織全体の目標と価値観を表します。経営戦略や事業戦略は、これらの共有価値観に基づいて策定されるべきです。組織がどのような目的を持ち、何を重要視しているかが戦略に影響を与えます。
人材(スタッフ)は、組織内の従業員を指します。経営戦略は、必要なスキルや人員配置に影響を与えます。システムは、スタッフの業務をサポートし、生産性を向上させる役割を果たします。
組織のリーダーシップスタイルは、組織の文化や価値観に影響を与えます。経営戦略は、リーダーシップスタイルと調和し、戦略の実行を指導します。システムは、リーダーシップとコミュニケーションに対して支援を提供します。
スキルは、従業員の能力と知識を示します。経営戦略は、必要なスキルセットを明確にし、従業員の訓練と教育に関連します。システムは、スキルの開発をサポートし、学習プラットフォームや情報アクセスを提供します。
システム(Systems)は組織の基盤。経営戦略と事業戦略の実行において不可欠です。 これらの要素は相互に連携し、組織が目標達成に向けて協力し、適切に調整される必要があります。
そのため、大規模システムを刷新する前に「経営戦略、事業戦略を実行するための戦略、戦術の明確化」と「システムの関係性」を改めて考えていただきたいです。
ここまでマッキンゼーの7Sをモデルにご説明してきましたが、「では具体的な準備をどのように進めたら良いのか」と思うでしょう。
組織や戦略を考えるためには、自社のことを改めて知る必要があります。
そこで、この章ではフライクの事前準備を例に用いて、どのようなことをすればいいのかを図解いたします。
【実現するための組織図】
【顧客ターゲット・顧客提供価値】
【市場分析】
それ以外にフライクで用意した資料は、以下のとおりとなります。
● 戦略を実行するための組織図とKGI、KPI指標値の策定
● 上記を定点観測するためのシステムの使い方
● システム刷新に向けたスケジュールと役割分担
● RFP策定に向けた業務プロセス、システム調査の実施内容
● 全体最適化システムに向けた機能要件と業務フロー図
● システム設計書
大規模システム刷新の成功をするために必要なのは、自社のことを徹底的に洗い出すことです。
それらが明確になった上で初めて「戦略」がつくられ、それを実行するための「組織」が形成され、進捗や見える化、業務負担を楽にするための「システム」という流れを作っていくのです。
これらをしっかりと準備することで、システムと人材がともに成長できるような導入を行うことができるでしょう。
大規模システム刷新の導入前にやることがわかったところで「よし、実際にやってみよう!」という企業もあれば、「でも自社の今の状態では本当に導入して良いかわからない」と判断に迷う企業もあるでしょう。
そこで、フライクが大規模システムを刷新する際に実際に提供しているサービスをご紹介します。
【Vision Road Map(VRM)】
Vision Road Map(以下、VRM)とは、 会社の「今」と「未来」に向かって目指す方向性を把握した上で、それに合ったシステムを導入し、武器に変革するために伴走するサービスです。
大規模システム刷新・中堅規模向けクラウドERPシステム導入のためのコンサルティングを行い、導入プロジェクトチームの立ち上げと業務改革まで含めたシステム導入を見据えられるようにしていきます。
こちらのサービスでは、どのお客様に対しても最初にプレコンサルティングを実施しております。
フライクがどのようなサービスを提供し、今後一緒に付き合っていけるビジネスパートナーかを判断いただくため、1.5ヶ月ほどお試し期間となっています。
そして、正式見積を実施し、支援機関に応じた費用を個別見積いたします。
いかがでしたでしょうか?
数千万円〜数億円の大規模システム、そして全体最適化を見据えた組織全体の業務改善。
会社の大切な利益を再投資して未来の売上・利益を創るために投資を考えていらっしゃる企業は多いでしょう。
しかし、自社のことをしっかり伝えることができないままシステム導入をしている企業が多いのも現状です。
私達フライクは、限りある経営リソースを投資している企業様のシステム導入成功率を1%でも上げたいと思い、情報をアウトプットしております。 ぜひ、この想いや進め方に共感いただいた企業様で、フライクと一緒にシステム導入成功率を高めたい、システムを武器に変革したいという企業様はフライクへお問い合わせください。
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