今回はシステム導入を成功に導く「業務設計」のススメと題し、全5回に分けてシステム導入を成功に導くフライク流の方法と、導入後システムを継続させる秘訣について解説します。
第3回目は顧客潜在課題の推測です。
そんな方は、ぜひ最後まで読み進めて、システム導入がもたらす「変革の可能性」に触れてみてください。
まず、前回までのおさらいをしましょう。
業務設計プロジェクトを成功させるには、綿密な計画が必要になります。
さらに、IT投資を真の成長戦略へと転換するためには、業務要件の整理と明確化、利活用のイメージ構築、コミュニケーション強化が重要です。
また、システム導入の成功率はわずか52.8%と言われており、約半数が失敗するシステム導入を確実に成功へ導くために、フライクでは「業務設計コンサルティング」に力を入れています。
【業務設計プロジェクトの全体像】
今回は、この中の「3. 顧客潜在課題の推測」について解説します。
業務設計を行う上で、顧客が潜在的に持っている課題を推測することは非常に重要です。
しかし、顧客自身が気づいていない可能性のある課題を推測できるようになることの重要性は、単に解説を読むだけでは伝わりにくいかもしれません。
そこで、今回は「顧客潜在課題の推測力」を備えた営業担当者のエピソードを通じて、顧客が抱えている課題を推測することの重要性について解説します。
たとえば、とあるハウスメーカーの営業担当者が、下記のような顧客から相談されたとしましょう。
【顧客の情報】
【顧客の要望】
顧客の情報と要望は上に記載しているとおりです。
ここで重要になってくるのが、ここに書かれていない情報を推測すること、つまり、今回のテーマでもある「潜在課題を推測する力」です。
具体的には、ここには書かれていないものの、お客様が今の賃貸暮らしで感じている可能性がある不満や、「5年後、10年後、20年後の将来」を想像し、それによって浮かんだ顧客の中にある潜在課題を仮説として書き出していきます。
5年後、10年後の未来は、意外とお客様自身も深く考えていないことが多いものです。
だからこそ、こちらから未来の生活を想像した質問を投げかけることで、自然と会話の中で「本当に必要なもの」が浮かび上がってくるのです。
また、お客様から返ってきた回答に対して、「なぜそう思ったのですか?」といった“なぜ?”を重ねる深掘りをすることで、お客様が本質的に求めていることや、大切にしている価値観が見えてくるでしょう。
では、このハウスメーカーの例を業務設計プロジェクトに置き換えると、どういうことになるのでしょうか。
システム導入を検討している企業様からよくある問い合わせの例がこちらです。
システム導入を検討している企業は、何を理由にシステムを検討しているのでしょうか?
先ほどのハウスメーカーの例と同じく、お問い合わせ(一次情報)の裏側には、こういった顧客独自のストーリーがあるはずです。
そしてこういうときに「よくやってしまいがちな失敗」は、一次情報だけに目を向けて自社のサービスを押し付けてしまうことです。
相手の立場に立って【自分ごと】として考える「一人称の視点」と、チームとして一緒に取り組む「二人称の視点」という当事者意識を持ってお客様に向き合う姿勢が大切になります。
このプロセスを丁寧に繰り返すことで、徐々に「潜在課題の推測」が深まり、お客様との信頼関係もさらに深まるのです。
さらに、業務設計プロジェクトでは、将来発生する課題を見据えてヒヤリングをしていきます。
上記のような要望を叶えるために、今の商材・サービスだけを意識した見積書・請求書が簡単にできるシステムを開発したとしましょう。
近い将来発生することとしては
というリクエストが出てきそうですよね?
現在のことだけでなく、将来発生し得る課題まで想像できるようになれば、システムが長期的資産価値の高い武器に変革できるのです。
さらに「潜在課題を推測する力」の応用として、潜在課題同士をかけ算することでさらに新たな潜在課題を探ることができたり、根本的な課題解決につながったりする可能性があります。
詳しくは次章「4.業務フローの整理・課題の深掘りと検証」でもご説明しますが、ヒヤリングにおいて重要なのが「かけ算」を意識することです。
ハウスメーカーの例で言うと、単にキッチンやリビングなどの各部屋への希望を聞くだけではなく、仮説を基に具体的な使い方も加味してヒヤリングを行います。
たとえば【勉強 × キッチン】【家族構成 × 将来の部屋の使い方】でヒヤリングを行う例を見ていきましょう。
仮説課題をしっかり把握することで、このように深さのあるヒヤリングを実現できます。
これをシステム導入に置き換えてご説明すると、次のようになります。
例えば、システム導入の場合は
と
という課題をかけ合わせた場合、どんな可能性が考えられるのでしょうか?
例えば
→そこで、ベテラン社員やトップセールスマンの売り方を体系化して、若手営業マンのスキルセットを磨いていきたい
そんなニーズが考えられますよね?
つまり、単純にシステムを作るのではなく、潜在課題同士をかけ算することでより深いレベルの「潜在課題を推測」することができるようになります。
このように、潜在課題の推測は、単に課題の有無を確認するだけでなく、ヒヤリング対象者に新たな気づきを与え、その気づきから発展して考えてもらう「問いの質」の向上効果があります。
このプロセスを通じて、「住宅」を単なるモノとして販売するのではなく、お客様のライフストーリーに深く結びつけた「コト」として提案するきっかけを作ることができるのです。
次の工程では、「業務フローの整理と課題の深掘り・検証」と題して潜在課題を基にヒヤリングを進めていく方法について解説いたします。
このブログを参考にし、皆さんのシステム導入成功につながりますように。
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