このブログでは、「猫でもわかる!はじめてのSalesforce」と題し、全3回にわたりはじめてSalesforceを使用するという企業様に向けて解説していきます。
第一部:Salesforceの歴史とプロダクトの発展を紐解く
第二部:Salesforceライセンス・基本機能をわかりやすく解説
第一部「Salesforceの歴史とプロダクトの発展を紐解く」では、Salesforceの特長や、歴史・プロダクトの発展を解説します。
まずはSalesforce活用への一歩を踏み出してみましょう。
Salesforceとは、世界中の会社で使われている「クラウド型の営業支援&顧客管理のシステム」です。
もう少し噛み砕いてご説明すると、「営業活動や顧客とのやりとりを、パソコンやスマホでまとめて管理できるツール」といったところでしょうか。
Salesforceの特長は、以下のとおりです。
営業支援&顧客管理システムと聞くと堅苦しく、操作も難しいのでは?という印象を受けるかもしれませんが、蓋を開けてみればFacebookやX、YouTubeのように、ログインすればどこからでも使えるサービスです。
Salesforceといえば、主に社内で「営業部」が使用しているというイメージを持っていらっしゃる方も多いでしょう。
たしかにSalesforceは営業部で活用できる機能が多くありますが、それだけではありません。
といった、お客さまと関わるさまざまな部門で「同じ情報」を見ながら連携できるのが、Salesforceの強みです。
Salesforceには、「CRM」と「SFA」という二つの仕組みがあります。
「CRM」と「SFA」は今後の解説でも頻出するワードとなりますので、最初に押さえておきましょう。
☆CRM(Customer Relationship Management)
「顧客とよい関係をつくるためのしくみ」
例:このお客さまからは、以前どんなお問い合わせをいただいた?
どのような製品を買った?
→ 顧客の情報や履歴をちゃんと記録・共有するための仕組みです。
☆SFA(Sales Force Automation)
「営業活動を効率よく進めるしくみ」
例:今、どんな商談が進行中?どのフェーズで止まっている?
→ 営業のやりとりを“見える化”して、チームで協力できるようにします。
ここからは、Salesforceに搭載されている3つの優れた機能についてご紹介します。
1つ目は、Salesforceが「SaaS(サース)型のサービス」だという点です。
SaaSとは、Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)の略で、インストール不要・クラウド上ですぐに使える仕組みのことを指します。
そのため、冒頭でお話ししたようにパソコンにソフトをインストールする必要もなく、インターネットさえあればスマートフォンやタブレットでも閲覧可能。
かつ社内で同じ情報を同時に閲覧しながらチーム内で連携をとることができます。
【SaaS型のメリットまとめ】
SalesforceはこのSaaS型だからこそ「いつでも」「どこでも」「誰でも」利用できる、自由度の高いサービスなのです。
2つ目は、初期搭載の機能の多さと深さです。
Salesforceでは、初期に搭載されている機能だけで以下のような運用ができます。
さらに「AppExchange(アップ・エクスチェンジ)」という公式アプリストアがあり、スマートフォンを使用するような手軽さでビジネスに必要なアプリをインストールして、必要な機能をあとから追加することも簡単にできます。
基本機能を学んだあとは、自社にとってより使いやすいシステムになるよう構築していきましょう。
そして、Salesforceの最大の強みのひとつが、自社専用のアプリケーションを開発できる拡張性です。
しかも、最初からそのための仕組みが用意されています。
【開発に使う主なツール】
○Salesforce専用のプログラミング言語。Javaに似ていて、主に処理の自動化やAPI操作に使います。
○たとえば、こんなときに使います:
■毎月末に自動でメール送信
■特定条件で自動的に取引先を更新
■複雑な承認フローやルールの実装
○独自の画面をHTMLやJavaScriptで自由に作れる仕組み。
○標準の画面で足りないときに、ユーザーインターフェースをカスタマイズできます。
○Salesforce開発でよく使われるプログラミングエディター。
○公式の拡張機能が用意されていて、開発者にとって使いやすい環境です。
これらを使えば、会社の業務にぴったり合ったシステムを、Salesforceの中に作ってしまえるというわけです。
Salesforceの特長やメリットを知っていただけたところで、次にSalesforceの歴史とプロダクトの発展について紐解いていきましょう。
「Salesforceに興味はあるけど、どこから理解を始めたらいいかわからない」
「なんとなく聞いたことはあるけど、結局どんなサービスなの?」
そのような声を、フライクでもたくさん耳にしました。
Salesforceは機能が豊富で柔軟性も高い反面、最初の一歩が掴みにくいサービスでもあります。
しかし、Salesforceは最初から“全部入り”の巨大なサービスだったわけではありません。
もともとSalesforceは「営業支援ツール」として誕生し、そこから「マーケティング」「サポート」「分析」「チャット」など、必要な機能を少しずつ増やしながら進化してきたプロダクトなのです。
このような企業やツールの歴史を知ることで、Salesforceというサービスの「作りやすさ」や「使い方のヒント」が見えてくるでしょう。
Salesforceは、1999年にアメリカ・サンフランシスコで創業しました。
創業者は、当時オラクルに在籍していたマーク・ベニオフ氏。彼はある疑問を持っていました。
「なぜ企業は、数百万円・数千万円もするソフトを買って、インストールして、さらに運用やメンテナンスに時間とコストをかけているんだ?」
ベニオフ氏は、こう考えます。
“People don’t want to buy software. They want to use software.”
(人々はソフトを買いたいのではなく、使いたいのだ)
— Marc Benioff, Behind the Cloud
この考え方から生まれたのが、インターネット上で使える「クラウド型」の営業支援ツールです。
こうしてSalesforceは「買うソフト」ではなく、「使うサービス(SaaS)」という新しい形のビジネスツールとして、多くの企業に広がっていきました。
1999年:Salesforceの誕生
Salesforceは1999年3月8日、アメリカ・サンフランシスコの小さなアパートからスタートしました。
創業者のマーク・ベニオフと3人の仲間たちは、「営業支援分野で世界トップのインターネット企業になる」という目標を掲げ、クラウドで使えるCRMの開発を始めたのです。
この考え方をベースに、世界初のクラウド型営業支援ツール(SFA)が生まれました。
2000年:「No Software」キャンペーンと正式ローンチ
2000年2月7日、サンフランシスコで行われたイベント「The End of Software(ソフトウェアの終焉)」で、Salesforceは正式にサービス提供を開始。
インパクト抜群の「No Software(ノーソフトウェア)」というロゴや抗議パフォーマンスで話題を集めました。
2004年:ニューヨーク証券取引所に上場
創業からわずか5年後。
Salesforceはニューヨーク証券取引所に上場。
1株11ドルで約1億1,000万ドルを調達し、クラウド業界の注目企業となりました。
この時期、Salesforceの導入企業はすでに5,000社を超え、世界中で使われるCRMとして成長を続けていましたが、まだ「営業支援(SFA)」に特化したシンプルなツールでした。
しかしながら、以下のような仕組みを初めてクラウドで実現したことで、「営業=属人化」の時代に終止符を打ったのです。
Salesforceは、営業支援ツールからスタートしましたが、その後さまざまな他社のITツールを買収して取り込むことで、全社的な業務プラットフォームへと成長してきました。
ここでは、特にインパクトの大きかった買収(M&A)と、どのようなITツールを取り込んだのかをわかりやすくまとめます。
①ExactTarget(2013年、約25億ドル)
メール配信やキャンペーン管理ができるマーケティングオートメーション(MA)ツール
→ B2B向けにはPardotも傘下に。
「見込み顧客」に対して、メールやSNS、WEB広告などを自動で配信・管理する仕組みのことです。
担当者が1件1件メールを送らなくても、興味や行動に合わせて最適なメッセージを届けることができます。
マーケティング部門でも使える「Marketing Cloud」の中核になり、
見込み顧客の獲得から育成までをSalesforce上で管理できるようになった。
②Demandware(2016年、約28億ドル)
ネットショップを構築・運営できるクラウド型のECプラットフォーム
○EC(イーシー)=Electronic Commerceの略で、インターネット上で商品やサービスを売る仕組みのこと。
つまり「ネット通販(ネットショップ)」のことです。
Amazonや楽天のように、オンラインで商品を並べて・注文を受けて・配送する仕組みを企業が自社で持てるようにするのが「ECプラットフォーム」です。
○「Commerce Cloud」が誕生し、小売・アパレル・化粧品・食品など、リアル店舗だけでなくネット販売を強化したい企業にも広がるきっかけになりました。
③MuleSoft(2018年、約65億ドル)
○他のシステムやアプリとつなげるためのデータ連携・統合プラットフォーム(iPaaS)
○Integration Platform as a Serviceの略で、社内の業務システム(会計ソフトや在庫管理、基幹システムなど)や外部のSaaS(Google、freee、LINEなど)をノーコードや少ない開発で“つなげる”ためのクラウドサービスです。
○例えば:
– 「Salesforceで受注したら、自動で請求システムに連携」
– 「複数のシステムのデータをまとめて分析したい」
といった連携・自動化を、専門知識がなくても比較的簡単に実現できるのがiPaaSの特徴です。
MuleSoftの導入により、Salesforceは他のシステムとつながる“情報のハブ”としての役割を強化。
特に、既存の基幹システムと連携して全社的なデータ統合・業務自動化がしやすくなった点は大きな進化です。
④Tableau(2019年、約157億ドル)
グラフやダッシュボードでデータを見やすく・わかりやすく表示できるBIツール
○ビジネスの意思決定に役立つ“見える化”ツールのことです。
数字やデータをただ表で見るのではなく、棒グラフ・円グラフ・地図・トレンドラインなどで、直感的に現状を把握できるようにするツールです。
◯例えば:
-営業成績を部門別・月別でグラフにする
- マーケティング施策の効果を一目で比較する
- 顧客の購入傾向や地域別の売上分布をマップで見る
Sales CloudやMarketing Cloudに蓄積されたデータを、Tableauでわかりやすく・素早く分析できるようになり、意思決定のスピードが大幅に向上しました。
⑤Slack(2021年、約277億ドル)
チームや会社内でのやりとりを効率化するビジネスチャットツール
メールよりもスピーディにやりとりできて、ファイル共有・リアクション・通知連携なども可能な“業務のハブ”になるチャットアプリです。
◯例えば:
- 社内の部署ごとにチャンネル(グループ)を分けてやりとり
- Salesforceの通知をSlackに飛ばす(「商談が更新されました」など)
- GoogleカレンダーやZoomとも連携できる
Salesforce内の情報をSlack上で確認・操作できるようにすることで、
「業務のスタート地点がチャットになる」=“Digital HQ(デジタル本社)”構想が進みました。
☆まとめ:買収されたツールは、すべてSalesforceの“体の一部”に
Salesforceは、それぞれの分野に特化したツールを“つなげることで全体最適を目指す”という考えのもと、進化してきました。
Salesforceは近年、「AI」と「リアルタイムなデータ活用」を中心に、さらに進化を続けています。
①Einstein GPT(2023年)
OpenAI(ChatGPT)と連携した、Salesforce専用の生成AI機能。
できること例:
○営業メールの自動生成
○商談メモの要約
○ナレッジ検索の自動回答 など
これまで人が手作業で行っていた業務が、AIにより効率化。
「情報を探す」から「提案される」Salesforceへ進化しつつあります。
②Data Cloud(旧CDP)
顧客データをリアルタイムに収集・統合・活用できる基盤。
できること例:
○ウェブ閲覧履歴やアプリ利用状況の即時反映
○顧客行動に応じたアクションをその場で自動実行
部門ごとに分断されがちだった顧客データをリアルタイムでつなげ、より「その瞬間のニーズに応える営業・マーケティング」が可能に。
Salesforceは「営業支援ツール」から始まり、M&Aを通じて多様な業務領域を取り込み、今ではAIとデータで“次の行動”を教えてくれるビジネスプラットフォームへと進化しています。
いかがでしたか?
次回の第二部では「Salesforceライセンス・基本機能をわかりやすく解説」をテーマに、Salesforceの基本機能についてご説明します。
ぜひ、そちらも合わせてお読みください。
このブログを参考に、皆さんのシステム導入成功につながりますように。
NEW ARTICLES